「帰る時間なのに全然動こうとしない…」
「予定が変わっただけでかんしゃくを起こす…」
そんな“こだわりの強さ”に困っている保護者の方は少なくありません
発達障害や発達が気になる子どもたちの中には、「予定通り」や「いつものやり方」への強いこだわりをもつ子がいます
一見わがままや頑固に見える行動も、安心を求める気持ちの表れだったり、感覚や認知の特性が背景にあることも
今回はそんな“こだわりが強くて予定変更が苦手な子”への支援について、作業療法士の視点から日常でできるアイデアをお伝えします!
「こだわりが強い」のはなぜ起こる?
まず大切なのは、「なぜこだわるのか?」を理解することです
こだわりの背景にはさまざまな理由があります
✅ よく見られる背景:
- 予定が変わると安心できない(先が見えず不安になる)
- 急な変化に対応するのが苦手(切り替える力が育っていない)
- 感覚の過敏さ(音や触覚など“いつもと違う”がストレスになる)
- 記憶やイメージの強さ(「こうなるはず」が強く残っている)
つまり、“予定変更でパニック”はただのわがままではなく、認知や感覚の特性による「混乱」や「防衛反応」として現れていることが多いのです
工夫①:「予定の見通し」をわかりやすく伝える
こだわりの強い子にとって、「次に何をするか」がはっきりわかることは安心感につながります
✅ おすすめの工夫:
- イラストや写真で一日の流れを見える化(スケジュールカードなど)
- 終わった予定に✔マークやシールを貼る(達成感も得られる)
- 口頭での説明は短く・具体的に(「ちょっとだけ待ってね」より「あと3分待ってね」)
言葉だけでは理解が難しい子も、視覚的な情報を使うことで混乱が減り、予定変更への耐性も育ちやすくなります
工夫②:「変更の予告」は早め&具体的に
急な変更でかんしゃくが起きる子には、“変更があること”をあらかじめ伝えることがとても効果的です
✅ こんな伝え方がおすすめ:
- 「今日は雨だから公園じゃなくておうちで遊ぶよ」
- 「いつもの先生じゃなくて、今日は〇〇先生だよ」
- 「15分後に帰るから、あと2つ遊んだら終わりね」
大事なのは、変化を“突然の出来事”にしないこと
事前に心の準備ができるだけで、かんしゃくや抵抗感がぐっと減ることもあります
工夫③:「代わりにできること」を提案する
やりたかったことができなかったとき、「ダメ!」と否定されるだけでは納得できない子も多いです
そこでおすすめなのが、“代わり”を提案する関わり方です
✅ 例:
- 「今日は公園行けないけど、おうちでボール遊びしようか」
- 「この順番はできないけど、最後は好きな〇〇していいよ」
- 「お昼は外じゃなくて、おうちでピクニックごっこしよう!」
“まったく同じこと”ができなくても、気持ちの切り替えにつながる選択肢を用意することで落ち着けることがあります
工夫④:「気持ちを伝える練習」を積み重ねる
こだわりが強い子の中には、自分の気持ちをうまく言葉にできず、混乱→パニック→かんしゃくとつながってしまう子もいます
少しずつでも「いやだ」「こわい」「やめて」などの表現ができるようになると、行動のコントロールにもつながっていきます
✅ 取り入れたい支援:
- 絵カードや表情カードを使って気持ちを伝える練習
- 「〇〇がしたかったんだね」と大人が気持ちを代弁してあげる
- 落ち着いたあとで「どうしてイヤだったの?」と丁寧に聞く時間をつくる
言葉以外でも、気持ちを表現する手段を増やすことが、こだわりによるトラブルの予防にもつながります
工夫⑤:「うまくいった体験」を意識して増やす
毎回トラブルばかりだと、大人も子どもも疲れてしまいますよね
だからこそ、「うまくいった!」という成功体験を積むことがとても大切です
✅ 成功体験をつくるコツ:
- 小さな予定変更でもOKだったら、しっかりほめる
- 「がんばって切り替えられたね!」と声かけをする
- 予定変更のあとに“ごほうびタイム”を取り入れる
こだわりの強さは“慣れ”と“安心”の積み重ねで少しずつ変化していきます
失敗よりも成功体験を意識して重ねていく関わりが、こだわりへの柔軟さを育ててくれます
おわりに~子どもの「不安のサイン」に寄り添うことから~
こだわりやかんしゃくは、「わがまま」「親のしつけ不足」と見られがちですが、実はその子なりの“安心の手がかり”だったりします
予定変更を受け入れる力も、“安心できる環境”や“大人の理解ある関わり”の中で、少しずつ育っていきます
大人が先回りしてできることはたくさんありますし、必要に応じて専門家の支援を受けるのもひとつの手です
お子さんの「安心できる予測可能な世界」を少しずつ広げていけるよう、一緒に工夫していきましょう!
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