「粘土を触りたがらない」「絵の具を手につけただけで泣く」「砂遊びは一切NG」
そんな“手を汚したくない”子どもへの関わりに悩んでいませんか?
発達障害や発達がゆっくりな子どもたちの中には、触覚の過敏さ(触覚過敏)が関係して、特定の素材や刺激を極端に嫌がることがあります
こうした子どもに対して無理に「慣れさせよう」とすると、かえって不安や拒否感が強くなってしまうことも
今回は、触覚過敏の子どもが少しずつ感触に慣れていくための遊びアイデアを、作業療法士の視点からご紹介します!
手を汚したがらないのは“わがまま”ではない
大人にとっては「ちょっと手が汚れるだけ」に思えても、触覚過敏の子どもにとっては、“不快”を通り越して“痛い”“怖い”刺激に感じられることがあります
例えば:
- 粘土のべたつきや冷たさが「気持ち悪い」と感じる
- 絵の具が皮膚に触れると「ゾワッとして涙が出る」
- 汚れた手をすぐ拭けない不快感にパニックになる
これは「感覚処理の違い」によるもので、決して“甘え”や“わがまま”ではありません
まずはその違いを理解することが、支援の第一歩です
触覚過敏の子に向けたあそびの工夫ポイント
「いきなり絵の具を手にベチャ!」ではなく、少しずつ段階をふむのが大切です
以下のようなポイントを意識して、その子のペースで楽しい経験を増やしていくことを目指しましょう
工夫①:まずは“道具を介して触れる”ところから
直接手で触れずに、スプーン・ヘラ・箸・ブラシなどを使って、感触の強い素材に触れるところから始めてみましょう
✅ 例:
- 粘土をスプーンで切る・乗せる遊び
- 絵の具を筆やローラーで紙にぬる
- ゼリーや寒天をスプーンでつつく
「手で直接触らなくてもいい」という安心感があると、意外と楽しめる子も多いです
工夫②:触りやすい素材から始める
いきなりベタベタ系に行くのではなく、比較的サラッとした素材・乾いた素材から挑戦していくのがおすすめです
✅ 入門に向いている素材:
- 乾いたお米・パスタ・ビーズ
- 片栗粉+水の“とろみあそび”(固まり→とける不思議な感触)
- ふわふわ系(コットン・フェルト・小麦粉粘土)
- 魚釣りごっこなどの「感触を避けながら楽しめる」遊び
“楽しくて安心”という経験を重ねることで、少しずつ触れる範囲が広がっていきます
工夫③:“自分で洗える環境”をセットにする
触覚過敏の子の中には、「汚れたらすぐに手を洗いたい」「水がないと不安」という子もいます
✅ 対応のコツ:
- 近くに濡れタオル・洗面器・ウエットティッシュを常備
- 「手が汚れても、すぐに拭ける」と伝えておく
- 「遊び → 拭く → 遊ぶ」など、こまめに洗ってOKな流れにする
“汚れる不安”を先回りして減らすことで、安心して遊びに挑戦しやすくなります
工夫④:感触の“予告”と“選択肢”を与える
触ってみてから「うわっ嫌だ!」となると、その素材自体に強い拒否感が残ります
事前に触感を説明し、「触る/触らない」を選ばせる関わり方が大切です
✅ こんな声かけ例:
- 「これはちょっとベタベタするけど、棒でさわってもいいよ」
- 「触ってみる?それとも今日は見てるだけにする?」
- 「これとこれ、どっちが気持ちよさそう?」
子どもが“自分で決める”経験ができると、コントロール感が生まれ、少しずつ挑戦しやすくなります
工夫⑤:スモールステップで“成功体験”を重ねる
「今日はヘラでさわれた!」「小麦粉に1本指だけタッチできた!」
そんな小さな成功を、親子で喜び合える環境がとても大切です
✅ 成長を見逃さないコツ:
- 「昨日よりちょっと多くさわれたね!」と変化に気づく
- 「がんばったね」ではなく「楽しそうだったね」と共感する
- 毎回やる必要はなく、1つできたら十分と考える
触れることが目的ではなく、“自分からやってみたい気持ち”を育てるのが本当のゴールです!
おわりに~無理せず、長い目で その子のペースで少しずつ~
触覚過敏は、“訓練して治す”というよりも、「苦手な感覚とうまく付き合っていく力」を育てる支援が大切です
早いうちから焦って無理に触らせるよりも、「今日は楽しかった」「やってみても平気だった」という記憶が、少しずつ“チャレンジできる子”につながっていきます
お子さんの“ちょっと触れた”を、ぜひ大切にしてあげてくださいね!
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