はじめに
「なかなか寝つけない」「夜中に何度も起きる」「朝がとにかく苦手」
発達障害のある子どもに、こんな睡眠の困りごとが見られることは少なくありません。実際、研究でも発達障害と睡眠障害の併存率は高いとされており、生活リズムや日中の行動、さらには学習や感情の安定にも影響を与える大きなテーマです
今回は、発達障害と睡眠の関係について「なぜ眠れないのか」「どんな支援ができるのか」を、作業療法士の視点も交えながら整理していきます!
発達障害のある子に睡眠の困りごとが多いのはなぜ?
一見「ただの夜更かし」「遊びたいから寝ない」と思われがちですが、背景には発達特性と関連する複数の要因があります
① 体内時計のずれ
自閉スペクトラム症(ASD)やADHDの子どもでは、メラトニン分泌のリズムが一般よりも遅れやすいことが報告されています。そのため眠気が来るのが深夜になり、自然と寝つきが遅くなるケースが多いのです
② 感覚過敏・感覚鈍麻
「布団の肌触りが気になる」「小さな音でも眠れない」など、感覚の過敏さが睡眠を妨げる場合があります。逆に、体の感覚が鈍くて安心感が得られず、眠りに入りにくい子もいます
③ 不安やこだわり
「いつもと同じ順番で寝たい」「電気を消すのが不安」「明日の予定が気になる」など、強いこだわりや不安が眠りの妨げになることも少なくありません
④ ADHDに伴う覚醒の高まり
ADHDの子どもは、夜になっても体や頭が「オン」の状態が続きやすく、寝床に入ってもなかなか落ち着けないことがあります
睡眠の困りごとが与える影響
睡眠不足は大人でもつらいものですが、発達途上の子どもにとっては学習・感情・行動に大きな影響を及ぼします
- 日中の集中力低下 → 授業や活動でのミスや不注意が増える
- 感情のコントロールが難しくなる → かんしゃくや衝動的な行動が出やすくなる
- 成長ホルモン分泌への影響 → 身体発達や免疫機能にも関わる
つまり「眠れないこと」は単なる生活リズムの乱れではなく、子どもの健やかな発達全体に直結する重要な課題なのです
具体的な支援の工夫
① 就寝環境を整える
- 部屋は暗めに、静かな環境にする
- 遮光カーテンを使う
- 寝具の素材を変えてみる(ガーゼ素材、重みのあるブランケットなど)
- 音に敏感な子はホワイトノイズや小さな音楽を活用
② ルーティンを作る
「お風呂 → 歯磨き → 読み聞かせ → 就寝」といった流れを毎日同じにすることで、安心して眠りに入りやすくなります。絵カードで見える化すると、切り替えがスムーズになる子もいます
③ 日中の活動を見直す
- 夕方以降の強い光やスクリーンタイムを控える
- 適度な運動を取り入れることで夜に眠気を感じやすくする
- カフェインを含む飲料(お茶・コーラなど)に注意
④ 不安を軽減する工夫
- お気に入りのぬいぐるみを持つ
- 「おやすみノート」で翌日の予定を書いて見える化する
- 親が一緒に数分添い寝し、安心感を与える
⑤ 専門的な支援
生活習慣の工夫だけでは改善しない場合、医師の診察を受けることも必要です。睡眠外来や発達外来では、メラトニン製剤の使用や睡眠衛生指導を受けられる場合もあります
保護者ができるサポートの心構え
睡眠の困りごとは、どうしても「しつけの問題」と捉えられがちです。しかし実際には脳や感覚の特性に深く関わっていることが多いため、「努力不足」と責めてしまうのは逆効果です
- まずは子どもが安心して眠れる「環境づくり」から始める
- うまくいかない日があっても「仕方ない」と切り替える
- 保護者自身も休息を取り、無理なく支援を続ける
こうした姿勢が、長期的には子どもの安定した生活リズムを支える力になります
おわりに
発達障害のある子どもの睡眠の困りごとは、特性に由来する部分が大きく、家庭だけで解決するのは簡単ではありません。けれども「なぜ眠れないのか」を理解し、環境やルーティンを工夫することで少しずつ改善していけます
「眠れない子」ではなく「眠りにくい脳や感覚を持っている子」と捉えることで、支援の方向性は変わります。安心して眠れる毎日が、子どもの発達を支える大切な土台になるのです!


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