「階段を駆け下りてヒヤヒヤする…」
「走り出したら止まれずに壁にぶつかる…」
「遊具から飛び降りてケガをしそう…」
そんなふうに、勢いがつきすぎて止まれない子どもに戸惑うことはありませんか?
単なる「落ち着きのなさ」や「性格の問題」と片付けられがちですが、
実はその背景には感覚の偏りや発達の特徴がかくれていることがあります
この記事では、作業療法士の視点から
勢いがつきすぎる子どもの特性と、家庭や園でできる運動支援のポイントをわかりやすく解説します!
よくあるお悩み・場面例
まずは、よくある相談からご紹介します:
- 階段を一気に駆け下りる。手すりも使わず怖い
- 廊下や運動場で止まれずに友達にぶつかる
- ブランコやすべり台で強くこぎすぎる・滑りすぎる
- 跳び箱などで“ジャンプして着地”が苦手
こうした行動は、見た目には「やんちゃ」「言うことを聞かない」ように映るかもしれませんが、
感覚や身体のコントロールに課題がある子どもによく見られる特徴です
なぜ止まれない?感覚と運動の発達の視点から見る原因
✅ 原因1:前庭感覚が過敏 or 鈍感
前庭感覚=バランスや加速度を感じる感覚です
この感覚に偏りがあると、体の動き方に極端な傾向が見られます
- 鈍感 → 強いスピードを求めてしまう(走る・ジャンプする・ぐるぐる回る)
- 過敏 → スピードにパニックを起こしやすい(階段で固まる、すぐ怖がる)
今回は「勢いがつきすぎる」パターンなので、鈍感傾向やスピード刺激への求めが強い子が多いです
✅ 原因2:固有感覚が弱く、自分の力加減がわからない
固有感覚=筋肉や関節の動きを感じる感覚です
これがうまく働いていないと、自分の体を「ちょうどよく」使うのが難しくなります
- 力の加減ができず強く踏み込む・押す
- ブレーキをかける動きが難しく止まれない
- 足を高く上げすぎる・低すぎるなど階段動作が不安定
✅ 原因3:見通しや身体イメージの弱さ
- 「どこまで走ったら止まるか」などの見通しが持てない
- 「今、自分の体がどこにあるか」の感覚(身体イメージ)がぼんやりしている
こういった状態だと、思っているより遠くへ飛んでしまったり、ぶつかってしまうことがあります
家庭や園でできる!運動支援のポイント5選
① 急に止まらせるより、“止まる練習”を遊びにする
「止まって!」と大声で言っても、身体がブレーキを覚えていなければ止まれません
遊びの中で“スピードをコントロールする経験”を積ませましょう
👉 例:
- ストップ&ゴーゲーム(走っていて合図で止まる)
- トンネルくぐりやマット運動でゆっくり進む練習
- 音楽に合わせて動いたり止まったりする遊び(リトミック的)
② 登り降りの感覚を“階段以外”で体験させる
階段が怖い・勢いがつく子に対しては、階段以外の場面で似た動きを経験させると安心です
👉 例:
- 段ボールやクッションの山を登る・降りる
- 低い段差で足の運びを練習する
- バランスボードや平均台で「そっと降りる」感覚を養う
③ “ジャンプして着地”の練習でブレーキ力を育てる
止まる力は、“衝撃を吸収する力”=ブレーキ筋の発達と関係があります
👉 例:
- 少しの高さからジャンプして、足を曲げて着地する練習
- トランポリンで跳びすぎずに止まる練習
- 転がる→止まる、飛ぶ→止まるなどの「動→静」遊び
④ 感覚の満足度を上げてから落ち着く活動へ
前庭感覚が鈍くて刺激を求めている子には、あえて先に“強めの感覚刺激”を与えるほうが落ち着くこともあります
👉 例:
- 最初に大きな遊び(ブランコ・ぐるぐる回転)を入れ、その後に静かな遊びへ
- 走りたい子は先に全力で走ってから、ボール運びなどの集中遊びへ移行
「やりたい→やった→落ち着いた」という感覚の流れがポイントです
⑤ 手すりや壁の“道具”を活かして安全に
階段の手すりを使わない子には、「使わないといけない」と教えるより、“手すりを使った方が楽”な経験を増やすのが効果的です
👉 例:
- 手すりにシールを貼って「ここにタッチして降りよう」ゲームにする
- 壁づたいに歩く遊びでバランスを取る練習をする
- 手を使うと安心・楽しいと子ども自身が感じられる工夫をする
まとめ|勢いがつきすぎる子には「感覚+身体+見通し」の支援を
止まれない・勢いがつく子どもに対して、「危ない」「ちゃんとして」と注意するだけではなかなか改善しません
本当に必要なのは、
- 感覚の偏りを理解すること
- 遊びの中でブレーキ力を育てること
- 見通しを持てる工夫をすること
焦らず、その子のペースに合わせて取り組むことで、「止まれる身体・落ち着ける感覚」が育っていきます
ぜひ、日常の遊びや関わりの中で取り入れてみてくださいね!
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