「ごはん中に立ち歩いてしまう」「椅子にじっと座っていられない」
そんなお悩みを抱える保護者の方は少なくありません
特に、発達がゆっくりなお子さんや、発達障害・グレーゾーンのお子さんの場合、「ただのわがまま」ではなく、体や感覚の特性が影響していることがあります!
今回は、作業療法士の視点から、
▶ ごはん中に立ち歩く背景
▶ 発達障害の子どもに見られやすい特徴
▶ 落ち着いて食事できる環境作り
について詳しく解説します!
なぜ子どもはごはん中に立ち歩いてしまうの?
まず、「なぜ立ち歩くのか?」の理由をいくつか見てみましょう
① 姿勢を保つのが苦手
食事中、椅子にじっと座っていられない子の中には、姿勢保持が苦手なタイプがいます
体幹や骨盤周りの筋力が弱かったり、バランス感覚が未熟だったりすると、「座っていること自体がしんどい」ため、無意識に立ち歩いてしまうのです
② 感覚の過敏・鈍麻がある
発達障害のお子さんに多く見られるのが、感覚の過敏(敏感)さや鈍さ(鈍麻)です
• 食器がカチャカチャ鳴る音が不快
• 食べ物のにおいや見た目が気になる
• イスやテーブルの感触が気持ち悪い
このような場合、「じっとして食べること自体が苦痛」になっている可能性もあります
③ 注意が逸れやすい・多動傾向がある
発達障害、とくにADHD(注意欠如・多動性障害)の傾向がある子どもは、
・ひとつのことに集中し続けるのが苦手
・気になるものがあるとすぐ注意が逸れる
という特徴があります。
テレビの音や他の人の動きが気になって、つい席を離れてしまうことも…
④ 食事そのものへのモチベーションが低い
食事に関心が薄い場合、空腹感が乏しい、味にこだわりがある、特定の食材しか食べないなどが理由で、食事に集中しづらくなっていることもあります
発達障害の子に見られやすい“立ち歩き”の特徴
以下のような行動が見られる場合、発達障害やグレーゾーンの可能性を含めて、専門職(作業療法士・言語聴覚士・臨床心理士など)に相談することも選択肢です!
• 座っていてもすぐに身体を揺らす、
脚をバタバタさせる
• 音や光、においなどへの反応が強い
(or鈍い)
• 食事中に話しかけると反応しづらい/過
剰に反応する
• こだわりが強く、食べられるメニューが
限られている
• いつも食事が長引く or 早食いで席を
すぐ立つ
もちろん、これらは発達障害に限らず、個性の範囲で見られることもあります
でも、「毎日の食事が大変」「本人もしんどそう」と感じたら、支援の工夫が必要なサインかもしれません
落ち着いて座って食べるための環境作り
では、どうすれば少しでも「座って食べられる時間」を増やせるのでしょうか?
作業療法の視点から、いくつかのポイントを紹介します。
① イスと机の高さを見直す
イスが高すぎたり低すぎたりすると、姿勢保持が難しくなります
✅ 理想的な座位姿勢の目安:
• 足の裏がしっかり床や足台についている
• ひざ・股関節が90度
• テーブルの高さはひじが軽く曲がる程度
椅子に滑り止めマットやバスタオルを敷くだけでも安定感が増します!
② 足をぶらぶらさせないようにする
足が床についていないと、体が不安定になり、集中しづらくなります。
→ 足置き台やステップ台で「足がつく」
環境を整えましょう。
③ 座る時間の見通しをもたせる
「あと何分がんばれば終わるのか?」が見えると、子どもは落ち着きやすくなります!
• タイムタイマー
(残り時間が色で見える時計)
• 「◯分間座れたらシール」などの視覚的
サポート
• 「3口食べたら1回立っていい」などの
ルール化も効果的です!
④ 食事に集中できる環境作り
テレビやスマホ、視覚的に気が散るものはなるべく減らします
また、食器の色や机の上の物の量をシンプルにするだけでも効果的です
⑤ 本人に合った椅子・クッションを使う
• 姿勢保持が苦手な子には、背もたれ・
サイドサポートがある椅子
• 落ち着きづらい子には、バランスクッシ
ョンやクッションチェアもおすすめ!
作業療法では、体の位置や動きを感じる「体の感覚(=固有受容感覚)」がうまく使えると、座りやすくなることがあると考えています
たとえば、座面に少し弾力のあるクッションを使ったり、足が床や足台について安定した状態にすると、「自分の体が今どこにあるか」を感じ取りやすくなり、安心して座っていられる子が多いです!
おわりに-まずは「できている部分」に目を向けて-
子どもがごはん中に立ち歩いてしまうと、「ちゃんと食べて!」「なんで座っていられないの!」とつい叱りたくなるものです
でも、もしそこに「発達の特性」や「感覚的な困りごと」があるとしたら、本人にとっても『苦手を頑張っている最中』かもしれません
まずは環境や声かけを少しずつ変えていくことで、
「座って食べられた!」という小さな成功体験が積み重なっていくはずです!
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